人を育てる極意


経営学者ダグラス・マグレガーの「X理論Y理論」はご存知の方も多いと思いますが、

 

まず、これを使って「人を育てる極意」を説明したいと思います。

マグレガーによると、職場におけるリーダー(経営者や管理者)の「部下に対する見方」には、

 

2つの見方「X理論とY理論」があります。

X理論とは、部下は、アメとムチによってコントロールしないと動かない。

人は基本的に怠惰である。」という見方・考え方です。
つまり、「いい仕事をすれば給料が上がる」などの報酬こそがモチベーションの源泉であり、

また、働かない者には、減給したり、叱ったり、厳しく監督する必要がある、と考える考え方です。
性悪説的な人間観」とも言えます。

一方、Y理論は、「性善説的な人間観」と言えます。

条件さえ整えば、部下は、周りから言われなくても自発的に動く。

 

人は基本的に仕事を楽しむ。」という考え方です。
「部下は必要なだけの創造力を持っている」

 

「仕事をすること自体の楽しさが、モチベーションの源泉である」という見方でもあります。

以上がX理論とY理論です。

さて、ここで考えていただきたいのですが、

「X理論」と「Y理論」では、どっちが正しいと思いますか?

まずはぜひ、ご自分なりの答えを考えてみてください。
「X理論」と「Y理論」では、どっちが正しいか?
これについては明解な調査結果が出ています。

答えは、「どっちも正しい」です。


つまり、「X理論(性悪説)」的な見方で部下を見る上司の下では、

 

その上司の見方どおりの、「言われないと動かない部下」

「報酬と罰則がないと頑張らない部下」「自主性に欠ける部下」が育つのです。

その上司の見方(=X理論)が正しかったことが証明されます。
その上司の信じたこと(=「部下は怠惰である」)は証明され、

その上司は、ますますX理論を信じるようになります。証拠があるのですから!

「やっぱり、人間というのは怠惰な動物だ。自分の部下達が何よりの証拠だ。

彼らはアメとムチがないと動かないではないか。私の考え(X理論)は正しかったし、

私の指導法は間違っていない!」ということになるわけです。

一方、「Y理論(性善説)」的な見方で部下を見る上司の下では、その上司の見方どおりの、

「自主性・創造性を発揮する部下」「仕事を楽しむ部下」が育つのです。
その上司の見方(=Y理論)が正しかったことが証明されます。

「やっぱり人間というのは勤勉で働き者だ。条件さえ整えば、

自発的に行動するし、創造性を発揮する。自分の部下達が何よりの証拠だ!」

もちろん、すべての部下が、上司の「見方」に100%左右されるわけではありませんが、

 

その上司(経営者)の部下を組織単位(チーム単位)で見ると、

明らかに上司の「見方」が組織に多大な影響を与えています。

名著「7つの習慣」の著者であるコヴィー博士も、次のような体験をされたそうです。

コヴィー博士の息子の一人が、学校にうまく適応できず、成績もかなり落ち込んでしまいました。
その息子は、人と接することにおいても未熟で、また、スポーツも苦手な子どもでした。

コヴィー博士は、何とか息子を助けたいと、必死になりました。
息子が前向きになるように「頑張るんだ!絶対にできる!」と励まし、

 

息子が少しでもうまくできた時には、彼が自信をもてるように

「いいぞ、その調子だ!」と励ましました。
他人が笑おうものなら、「からかうんじゃない。息子は頑張っているんだから。」と怒りました。

コヴィー博士は、息子を支え、サポートしようと努力しました。
しかし、息子は完全に自信を失ったままでした。
コヴィー博士の努力は、まったく報われませんでした。

そして、コヴィー博士は、あることに気づいたのです。
「息子に対する、自分の見方に問題があるのではないか?」と。

コヴィー博士は、自分が心の奥底で、「息子は基本的に劣っている。

あるいは、何かが足りない。」という意識で、息子を見ていたことに気づきました。
「自分が助けてやらないと、息子は自立できない」という見方で、息子を見ていたのです。
「だから、自分の努力が報われなかったのだ。」と気づきました。

表面的な行動や言葉をどう変えてみても、息子に実際に伝わっていたメッセージは、

 

おまえにはできない。だから、おまえを守る必要がある。」というものだったのです。

そこで、まず「息子に対する見方」を変える必要があると気づいたコヴィー博士は、

息子の独自性と可能性を信じるよう決意し、彼の邪魔をしないようにしました。
親として、息子を信頼し、尊びました。

こうして、息子に対する見方を変えた結果、息子には次のような無言のメッセージが伝わりました。
おまえを守る必要はない。おまえは、十分にやっていける。」

その結果、息子は自信に満ち始め、勉強においても、友人関係においても、
スポーツにおいても、目を見張るほどの成長を見せたのです。

何年か経って、彼はスポーツでは州のベストプレイヤーに選ばれ、学校ではクラス委員に選出されたのです。

(以上、「7つの習慣」キングベアー出版 より抜粋して要約)

これも、「息子に対する見方」が、実際に彼の成長に大きな影響を与えていた例です。

X理論からY理論にパラダイムシフト(=ものの見方を転換すること)したことで、

息子が大きく変わったのです。

アメリカのローゼンタールがやった次の実験も有名です。

まず、小学校のあるクラスの生徒全員に知能テストをさせ、

担任の教師には、その正確な結果を伝えず、次のように伝えました。

「このテストは、将来の学力の伸びが確実に予測できるものです。

ただ、研究中なので、テスト結果を教えることはできませんが、

 

将来伸びる子の名前だけ、先生に教えましょう。」

しかし、そこで教えられた数人の生徒の名前は、実際は知能テストの成績に関係なく、

 

ランダムに選ばれたものでした。(そのことは、担任の教師には秘密にされました)

その1年後に再び知能テストをしたところ、

 

名前をあげられた子は、そうでない子に比べて明らかに成績が上がっていたのです。

つまり、担任の教師が「この子は伸びる子だ。」と信じた通りの結果になったわけです。
このように、「信じていることが実現すること」を、心理学ではピグマリオン効果といいます。

松下幸之助さんは、成功の秘訣を聞かれた時に、

学歴がなかったので、もが偉く見えた。社員を尊敬できた。」とおっしゃったそうです。
経営の神様と言われた松下幸之助さんも、「Y理論の人」だったわけです。

X理論で人を育てても、Y理論で人を育てても、

結局信じたことが実現するのであれば、どっちを信じた方がいいのでしょうか?

そうです!自立的・自発的・創造的な人財が育つのは「Y理」なのです。

野口嘉則より

Posted by on 2012年1月8日. Filed under コラム. You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0. You can leave a response or trackback to this entry

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